野いちご風味な手紙

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ドングリダンス


#第一章 森の入り口で

 秋になると、ポルが必ず訪れる森があります。他の季節では特徴のない小さな森ですが、紅葉が綺麗な頃になると、キノコがいっぱい採れるすばらしい場所です。
「きれいだなあ」
 森の入り口で、ポルは思わず呟きました。色付いた枝の葉が、木々の合間から差し込む陽光に照らされて、とても鮮やかに見えました。さらに、落ち葉で敷き詰められた地面は、カラフルな絨毯のようでした。
 時折、ポルの周りをひらひらと落ち葉が舞っていきます。背中に背負ったカゴにも、何枚か入ったようです。
 森の中へさらに進みながら、ポルは踊るようにくるくる回りました。すばらしい景色の中で、心がうきうきします。
「いてっ」
 ふいに、何かが頭の後ろに当たりました。ポルは背負っていた大きなカゴを下ろすと、頭をさすりました。今日の目的はこのカゴいっぱいにキノコを入れることですが、今は別の物が入っています。
 カゴの中から、バミットが顔を出しました。
「もっと丁寧に運んでくれよ。あんなに揺れたら危ないじゃないか」
「だからって、頭を叩かなくたっていいじゃないか」
 ポルはカゴの中で寝ていただけのバミットに文句を言いますが、バミットは謝るわけでもなく、大きく伸びをしながら辺りを見回しました。
 ポルがため息をつきます。森の紅葉を絵に描きたいと言うので、ポルが画材と一緒に運んできてあげたのに、ひどい仕打ちです。
 ちなみに、バミットはとても体が小さいので、いつも誰かが画材を運んであげています。フワンが宝箱に入れて運んであげることもあれば、今日のようにポルが運んであげることもあります。
「この辺りで絵を描こうと思うんだ」
 バミットは、森の少し開けた場所を指差しました。そこは、ぽっかりと空からの日差しで地面が照らされている場所でした。
 ポルは、不服そうにしながらも、カゴから画材を取り出して地面に置いていきました。バミットと比べれば大きなキャンパスと絵の具のパレット。筆は、バミットが自慢する「すばらしい筆」です。
 バミットは自分のことを「すばらしい絵描き」と言うのですが、ポルにはよくわかりませんでした。ですが、バミットが描く絵はとても上手なことは、誰もが認めるところでした。
「それじゃ、おいらはキノコを集めに行ってくるね。また、迎えに来るから」
「うん、わかった。ドングリもよろしく」
「えっ? う、うん。そうだね」
 ポルが、しぶしぶ返事をします。実は、今回はバミットが(キノコ図鑑)を作ってくれたので、そのお礼としてドングリも集める約束になっていたのです。

仕方なくドングリも探す

 毎年、ポルが食べられないキノコもたくさん集めてしまうので、見かねたペンウッドが、バミットに頼んだのです。
 できあがってきた(キノコ図鑑)はとてもすばらしい出来で、たくさんのキノコの種類が挿絵とともに説明されていました。こんなにすばらしい図鑑をもらったら、お礼をするのも仕方ありません。ポルは、キノコ集めのついでに、ドングリも集めることにしました。

#第二章 キノコと妖精

 キノコは木の根元や見えにくい下草の中などでよく見つかるので、ポルは枯れ葉をかき分けながら、あちらこちらを探してみました。背負ってきた大きなカゴがいっぱいになるくらいに採りたいと思っていました。
 ほどなくキノコが見つかったので、さっそくポルはキノコ図鑑を取り出そうとポケットに手を入れました。すると、ポケットに入れていたビー玉に手が触れました。
 魔法のビー玉です。
 フィロに言われて、何の魔法がかかっているのか調べてみることにしましたが、どうしたらよいのかもわからず、とりあえず出かける時はポケットに入れていたのです。
 ポルはポケットからビー玉を取り出すと、目の前で眺めてみました。赤い模様が入っているガラスに、森の紅葉が映り込みます。ですが、魔法のようなことは何も起こりませんでした。
 キノコ集めに戻ることにします。ポルはビー玉をポケットにしまうと、(おいしいキノコ図鑑)を開いて目の前のキノコと見比べました。図鑑にはキノコの種類が上手な絵と文字で書いてあるので、すぐに食べられるキノコかどうか調べることができました。とても、役に立つ図鑑です。
「よかった。これは大丈夫なキノコだ」
 キノコ図鑑を確認したポルは、キノコに手を伸ばしました。大きめキノコと、小さめなキノコが並んでいましたが、まずは大きめなキノコを選びます。
 ところが、ふいに邪魔が入りました。なんと、どこからか小さな妖精が現れてキノコの上に座り込んだのです。
「これは、私の椅子なんだから、取ったらだめ」
 妖精は、キノコの上で足をばたつかせながら笑っています。小さな妖精がキノコに座ると、確かにちょうどいい椅子のようでした。
 妖精なんて本でしか見たことがなかったポルは、とても驚きました。背中に羽根の付いた小さな小さな妖精が、しゃべっています。笑っています。
 珍しさから妖精をじっと見つめていたポルですが、どうにか気持ちを落ち着かせると、ゆっくりと話しかけました。
「こんにちは、妖精さん。おいら、キノコを採りに来たんだ。でも、君の椅子なのなら、そのキノコは諦めるよ。ほかを探すね」
 キノコを集め終わったあとにフィロの家へ行く予定なので、ポルは妖精に出会ったことをフィロに話してあげようと思いました。まだ胸がどきどきしています。なんてすばらしい体験なのでしょう。
 ポルは立ち上がると、他のキノコを探すことにしました。そして、次に見つけたキノコも大きめな食べられる種類のキノコでした。
 ところが、ポルがキノコに手を伸ばしたとたん、また妖精が飛んで来てキノコの上に座りました。
「これは、私の椅子なの。あなたも、座りたいの? でも、無理ね。あなたは大きいもの」
 キノコに座るつもりはないポルでしたが、困ってしまいました。せっかく見つけたおいしそうなキノコが、二つとも採れませんでした。この森には毎年キノコを採りにくるのですが、こんな経験は初めてでした。
「君のイスは、いくつあるんだい? さっきのイスは使わないの?」
「さっきのって、なあに」
「あっ」
 ポルは、気が付きました。目の前の妖精は、似ていますがさっきの妖精とは違うのです。
「君は別の妖精さんなんだね。わかった、おいら別のキノコを探すね」

キノコに座っている妖精

 妖精をどかしてまで目の前のキノコを採ろうとは思わないので、ポルはさらに他のキノコを探し始めました。
 ですが、そのあとも大きめなキノコを採ろうとすると必ず妖精が座っているものですから、ポルは仕方なく小さめなキノコを採ることしかできませんでした。これでは、なかなかカゴがいっぱいになりません。
 たまたま妖精たちの住まいに近い場所だったのかと思い、ポルは森の中を移動して、少し離れたあたりを探し始めましたが、なぜかそこにも妖精たちが現れました。
 何度も同じことが繰り返されると、ポルも「もしかして」と思うようになりました。
「あーあ。もう、キノコはいらないや。おいら、ここで昼寝する」
 ポルは、背負っていたカゴを放り出すと、枯れ葉が散らばる地面に寝ころびました。すると、妖精たちの様子が変わりました。座っていたキノコの上に立ち上がると、ポルの様子をみんなで眺めては首を傾げます。
「寝ちゃったのかしら?」
「つまらないわ」
「おもしろくないわ」
 小さなささやき声が聞こえてきます。ポルは目をつぶりながら聞いていました。やはり妖精のいたずらだったのです。昔、フィロから借りて読んだ本に、妖精はいたずら好きだとも書いてあったのを思い出したのです。そして、妖精のいたずらがしつこいときは、知らんぷりすればよいのだということも。
 秋の森でじっとしていると、風で枝から飛ばされた葉が、空中を舞ってポルの上にも落ちてきました。このまま寝ていたら、いつか落ち葉に埋もれてしまうのではないかと思っていると、また妖精たちの声が聞こえてきました。
「えっ、ドングリ?」
「ドングリを持って行けばいいのね」
「楽しそう!」
 何のことかはわかりませんが、ポルが薄目を開けると、妖精たちがみんなで同じ方向に飛んでいくのが見えました。中には、ドングリを抱えている妖精もいます。なんにせよ、妖精はいなくなったのです。
 ポルは、キノコを採ってみました。大丈夫です。もう、妖精はいたずらをしてきません。
「さっ、がんばるぞ」
 カゴいっぱいにキノコを集めたら、フィロにも分けてあげるつもりです。いつも、おいしいケーキなどをごちそうになっているので、一番大きくておいしそうなキノコをプレゼントしようと、ポルは決めていました。
 キノコの中には食べられない種類もありますが、選び方はバミットが作ってくれた(おいしいキノコ図鑑)があるので安心です。

#第三章 ドングリで踊る

「そろそろ、ドングリも集めるかな」
 ポルは、キノコでいっぱいになったカゴを背負いながら呟きました。妖精たちに邪魔をされてキノコ採りに時間がかかってしまいました。ドングリは、バミットのいる場所に向かいながら拾うことにします。
「あっ」
 妖精です。ポルはすばやく近くのやぶに隠れると、そっと妖精を観察しました。どんぐりを集めるのまで邪魔されては困ります。
 妖精は地面の近くをしばらく飛び回っていましたが、ふいに地面に降りると落ち葉をかき分けて何かを拾ったようでした。それは、ドングリでした。
 妖精が、ドングリを抱えながら飛んでいきます。ポルが行こうとしていた方向と同じです。バミットが絵を描いているはずです。
 妖精が持っていくドングリとバミットが関係していそうなことは、ポルにも何となく想像できました。妖精が、またいたずらをしているのかもしれません。
 別の妖精が飛んできて、ドングリを拾っていきます。ポルは、こっそり妖精のあとを追いかけてみました。すると、やはりバミットのそばに妖精たちが集まっていました。正確に言うと、妖精たちはドングリを抱えながら一列に並んでいました。すごい数です。ポルがカゴいっぱいに集めたキノコの数よりもずっと多い数かもしれません。
 さらに、ポルには妖精がバミットと踊っているように見えました。小さなバミットが、同じくらいの身長の妖精たちと順番にダンスをしているのです。
 ドングリを渡してバミットとダンスをした妖精は次の妖精と入れ代わり、その妖精もドングリを渡して踊り始めます。やぶに隠れているポルに気が付いた妖精もいましたが、もうポルには興味がないようでした。

妖精と踊るバミット

「おーい、バミット」
 ポルは、やぶの中から顔だけ覗かせると、思い切ってバミットを呼びました。バミットはすぐに気が付きましたが、ダンスはやめません。
「ポル。また、あとで来てくれ。妖精たちからもらったドングリを持って帰ってほしいんだ」
 バミットの横には、すでに踊り終わった妖精たちからもらったドングリが山になっていました。さらに踊れば、とてもたくさんのドングリがあつまることでしょう。
「それはいいけどさ、大丈夫なの?」
「なにが?」
 妖精にいたずらされたばかりのポルは心配しましたが、バミットは困っていないようでした。
「じゃあ、またあとで来るからね」
「よろしく」
 ポルは、バミットと別れるとフィロの家に向かいました。

#第四章 魔法の味付け

「今日は、モンブランケーキよ。さあ、召し上がれ」
 フィロが紅茶とケーキを用意して待っていてくれたので、ポルはモンブランケーキをおいしく味わい、紅茶を飲んでくつろぎながらフィロに森での出来事を話し始めました。
「まあ、それは大変だったわね」
「うん、おいら妖精と話をするなんて初めてだったから丁寧に話してみたのに、まさかいたずらされてなんて思わなかったよ。でも、その時、本で読んだことを思い出して、知らんぷりをしてみたんだ」
 妖精に関する本は、フィロが貸してあげたものでした。
「妖精には、あまり悪気はないのよ。ただ、楽しいからやっているだけなのよね。だから、飽きちゃえば、どこかへ行ってしまうわ」
「今は、バミットが大勢の妖精と一人ずつダンスしているはずなんだけど、妖精が飽きない場合はどうするの?」
「自分から、やめればいいのよ。やめたからって、妖精は怒ったりはしないけど、つまらない顔をして文句はいうかもね」
「ふーん。自分勝手なバミットみたいだ」
 ポルのせりふに、フィロは肩をすくめただけでした。バミットが自分勝手意にいばるのは、ポルに対してだけなのです。
「フィロにキノコをあげるよ。おいしそうなのをたくさんあげるね。フィロにはいつもお菓子をごちそうになっているから、おいらからのお礼です」
 カゴの中には森で採ってきたたくさんのキノコが入っています。ポルは、それをテーブルの上に全部並べてみました。大きさはそれぞれですが、見た目はどれもおいしそうです。
「たくさん採れて良かったわね。それで、妖精が座っていたキノコはどれ?」
「えっ、妖精が座ってたキノコ?」
「そうよ。妖精が触ったものはね、妖精の魔法が降りかかって、とてもおいしくなるのよ。バミットががんばってダンスしているのも、妖精のドングリを食べておいしかったからだと思うわ」
「そうなんだ。おいら、知らなかったよ。それじゃ、妖精と出会えたことは、運が良かったってことだね」
 ポルは、妖精にいたずらされて困ったことをすっかり忘れて喜びました。何よりも、特別なキノコをフィロにプレゼントできることがうれしかったのです。
「妖精が座っていたのはね、大きめなキノコなんだけど、全部じゃないかもしれない。だから、大きいのは全部フィロにあげるよ」

フィロにキノコをあげる

「やさしいのね、ポル」
 フィロは、ポルの鼻をやさしく撫でました。ポルが、照れながら体をくねらせます。
 ポルは、大きいキノコをテーブルの上に残すと、あとはカゴに戻しました。カゴの中身が半分ほどになりました。
 軽くなったカゴを背負ったポルは、バミットのところに戻ることにしました。たくさんダンスをして、魔法のドングリもだいぶ集まっていることでしょう。
「じゃあ、おいら行くね。モンブランケーキ、とてもおいしかったよ」
「秋だから、栗を使って作ってみたのよ。また栗が手に入ったら、作ってあげる」
「あのケーキって、栗ができてたの?」
「そうよ」
 魔法使いのフィロは、ポルが知らないことをいつも教えてくれます。花の種類も、お菓子やケーキと紅茶のことも、ポルはフィロに教えてもらいました。
 ですが、魔法は別。どんなにポルが興味を持っていたとしても、教えてくれません。ビー玉の秘密も妖精の秘密も、ポルは自分で見つけないとならないのです。
 魔法は特別なものなのです。

#第五章 だまされたポル

 キノコの森に戻ったポルは、バミットがいる場所へ向かって歩きながら栗の木を探してみました。
 以前に地面に落ちていた栗のイガを踏んで痛い思いをしたことがあるので、気を付けながら探します。もちろん、頭上にも気をつけます。熟した栗は、イガごと枝から落ちてくるからです。
 栗が、あんなにおいしいモンブランケーキになるなんて、ポルは今まで知りませんでした。思い出してうっとりしていると、ふと、落ち葉に紛れた栗のイガを見つけることができました。
 割れたイガの中に、栗が見えています。ですが、イガの中から栗を取り出すやりかたが、ポルにはわかりませんでした。うっかり手で触れば痛い目にあうかも知れません。
 ポルは近くに落ちている枝を拾うと、イガの割れ目にひっかけるように差し込んで持ち上げました。それから、そっと移動させてカゴの中に落としました。
 全部で三つのイガごとの栗ををカゴに入れると、ほっとしたポルはクスリと笑いました。
「もし、妖精がいたずらに来ても、さすがにイガの上には座らないよね」
 ポルは、栗の木を見上げました。いくつかイガが開きかけているものが見えましたが、そこは諦めることにします。木を揺することもできましたが、結果が恐ろしいのでやめておきます。
 やがて、ポルはバミットが妖精とダンスをしていた場所に着きましたが、そこには誰もいませんでした。描きかけの絵や道具は敷物の上に置きっぱなしです。バミットが妖精から集めたドングリは、敷物の上で山になっていました。
「バミット! どこにいるの?」
 ポルは、周りを見渡しながら呼んでみました。すると、森の奥から声が聞こえました。
「おーい、ポル。こっちだよぉ」
 バミットの声です。ポルは、声がした方を見ましたが、姿は見えません。また、声がします。
「おーい、急いでこっちに来てくれよ。カゴを背負ったまま来てくれよ」
 何だか状況がわからないので、ポルは考えてみました。ダンスは、もう終わったのか。妖精たちは、どこへ行ったのか。そして、なぜバミットがポルを呼んでいるのか。
 妖精になにかいたずらをされて困っているのかもしれません。
「バミット、どうしたのさ。何か困ってるの? おいら、よくわからないよ」
 森の奥に向かって声をかけながら、ポルは少しずつ進んで行きました。すると、何かがポルの頭に当たりました。
「なんだろう?」
 ポルが上を見上げると、今度は別の声が聞こえました。
「まだよ」
「まだなの?」
「わたしも、投げたいわ」
 どうやら、妖精たちがまたいたずらしているのだと、ポルは思いました。それでも、バミットが心配なので、さらに奥へ進んでいくと、突然、バミット大きな声が聞こえました。
「みんな、今だ!」
 掛け声とともに、ポルの頭上から、すごい数のドングリが飛んできました。あきらかに、ポルを目掛けて飛んできます! さすがに、ポルも痛くて悲鳴をあげます。
「なに、なんなの!」
 慌てふためいたポルが逃げだそうとしますが、追いかけるようにドングリが飛んできます。

ドングリから逃げるポル

 木の上では、枝の上に並べられたドングリを妖精たちが次々と投げていました。ポルが背負うカゴにどんぐりが入ると、その妖精は「やった」と喜んで笑います。はずれると、「もう一回!」と言って、また投げます。
「痛い、痛い!」
 ポルが悲鳴をあげます。カゴに入らないドングリが、ポルに当たるのです。
 逃げるポル。追いかけてドングリを投げつける妖精たち。そんな状況が、用意されたドングリがなくなるまでしばらく続きました。
 よろよろとポルが、画材が置いてある敷物のところまで戻ると、後ろからバミットが現れました。
「やった、計画どおりにうまくいった。ほら、ポル。ドングリがたくさん集まったでしょ」
「なんなのさ、どういうことなのさ!」
 ポルが怒りますが、バミットはあっけらかんとしています。 
「ダンスを終わりにしたら、妖精たちが不満そうだったんで、ゲームをしようと誘ったのさ。ポルが現れたらカゴを狙ってドングリを入れるゲームにね。妖精は楽しめるから喜ぶし、オレはドングリがさらに集められてうれしいし。いいアイデアだろ」
「はあ、もういいよ」
 ポルは大きくため息をつきました。バミットがからかってくるのは、いつものことなのです。怒っても、謝ってくることはありません。
 ポルは、バミットがダンスであつめたドングリも両手ですくってカゴに移しました。先に集めたキノコとイガ付き栗が埋もれてしまうほど、ドングリが集まりました。画材を入れる場所がなくなってしまったので、ポルは脇に抱えていくことにしました。
 もう、帰ることにします。秋の夕暮れは冷え込むからか、妖精たちもどこかへ行ってしまいました。
「じゃ、家までよろしく! 俺は、かごの中でのんびりとドングリを食べることにするかな」
 バミットは勢いよくポルが背負うカゴの中に飛び込むと、嬉しそうな声を出しながらドングリに潜り込みました。ポルは、慌てて止めようとしたのですが。間に合いません。
 悲鳴をあげながらカゴから飛び出すバミットを見て、ポルは思いました。
 モンブランって、栗が何個必要なんだろう。


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